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■番外編:コンガの皮の張り替え方
数あるラテンパーカッションの中でも一番人気で、プレイヤー人口も最も多いと思われるのがコンガである。にも関わらず、コンガの皮を自分で張り替える、というニーズは世間には少ないらしく、googleで検索しても10件ぐらいしか出てこない(こっちだともうちょっと出てくるが、関係ないページが目立つ)。張り替え方の解説書などもない。自分が最初に張り替えた時も、店の人やプロのコンゲーロ(コンガ・プレイヤー)に聞きながら、試行錯誤して自分なりの方法を見つけていったものだ。
愛する楽器を自らの手でグレードアップしたい、そんな想いを胸に当て所なく彷徨えるコンゲーロたちの一助になればと思い、このページを記す次第である。
大体にして打楽器というのは大雑把な楽器だ。中でもコンガは、樽の片面に皮を張っただけというシロモノ。世の中で考えられ得る楽器の中で、最も単純な構造だろう。対抗できるのは、棒2本を叩き合わせるクラベスぐらいなものだ。
価格もリーズナブル。管楽器でちゃんとしたものなら10万円台からだろうし、弦楽器の名器なら家が建つ。ところがコンガは、プロが使う最上級クラスのものでも1本10万いくら。20万するものにはお目にかかったことがない。ギターの弦交換やピアノの調律のような、ランニングコストもかからない。誠に財布に優しい、持ち主想いの楽器だ。これだけでも、パーカッション道を選んだことを幸せに感じる。
だがそんなコンガにも数年に一度、メンテナンスの機会がやってくる。すなわち、皮の交換だ。「皮なんか破れるまで使っていればいいんだよ!」という意見、それも正しい。かつて自分が在籍したサークルのコンガの皮は、創立以来一度も張り替えられたことがなかったが、それはそれで年月を経ねば醸し出せない、味わい深い響きになっていたものである。
しかし張り続けた皮はやがて伸びる。音がへたってきたな、と感じたら、交換を検討する時期が到来したのだ。コンガへの愛が問われる瞬間と言っても良い。だがしばし待て、ご利用は計画的に。皮の張り替えにはタイミングというものがある。
季節を選ぶ
高温多湿の国ハポンは、皮楽器にとっては大変暮らしにくい土地である。特に張り替え時は、すみやかに皮を自然乾燥させないと出音に影響するばかりか、最悪の場合カビてしまって使い物にならなくなる。乾燥する冬場がベストシーズンだ。間違っても梅雨時にトライしてはならない。
スケジュールと相談
一度張り替えると、最短でも1週間は演奏できない。失敗して張り直し、という事態にでもなろうものなら更に長引く。バンドの練習が入っていれば、手ブラで行って顰蹙を買うハメになるだろう。生活がかかったプロならば事態はより深刻。休業している間に同業他者に仕事を奪われてしまうかも知れない。張り替えには、時間と心に余裕のある時期を選ばねばならない。
以上じっくり検討の上、良き日取りが固まれば、いよいよ行動に移す。

皮を買いに行く
最初にすべきことは、張り替える皮を手に入れることだ。コンガ用のなめし革はパーカッション専門店でしか取り扱っていないので、まず店を探す。
自分の行きつけは、東京・浅草にほど近い田原町のコマキ楽器。行きつけと言っても、そもそも皮の交換自体が数年に一度しか起こらないイベントなので、来店頻度は推して知るべし。会員もやめてしまった。皮の在庫には変動があるので、事前に電話にて確認しておくと良い。
コマキ楽器5階の「エスニック・シティ」に足を運び、「コンガの皮を見たい!」と言えば、引き出しを開けて見せてくれる。ちなみに6階は「パーカッション・シティ」だが、こちらに行くとティンパニとか出てきてしまうので、騙されてはいけない。
さて問題の皮選びだが、張る前から鳴りなんてわからないので、すかしてみたり、なでなでしてみたり、抱きしめてみたりしながら、相性の良さそうなのを探していく。なにせ一度張ると数年は付き合わなくてはいけないのだ。入籍するより慎重になる。
コンガの直径によって使える皮のサイズが違うので、前もって測っておこう。LPのものならば、「キントです」「トゥンバドーラです」で通じる。お値段は大体1万円強。失敗した時のために予備を買うような贅沢はできないし、作業時の気合いの入り方にも影響するので、潔く1枚だけ選ぶ。人間、追いつめられた時にこそ秘められたパワーを発揮するものだ。
皮を張る
とうとうメインイベントだ。はやる気持ちを押さえつつ、買ってきた皮をコンガに被せてみたりしてふと気付く。「固い…」。そう、買ってきたままの皮は固く、どうやってもこれをこのままコンガの形状に沿わせることは不可能だ【写真1】。何も知らずに皮を買ってきたら、「金返せ!」と叫びたくなる所だろう。
そこで第1段階。まず皮を水に浸けて、ふやけるのを待つのである。一晩浸せば十分だ【写真4】。果報は寝て待て。
明けて翌朝。直前でオアズケを食らったことで、この頃には張り替え願望が全身になみなみと漲っていることだろう。そんな貴方とは対照的に、皮の方は大変ヤル気のないことになっている【写真5】。
ここからの作業の内容を一言で言うと「なるべくピンと張る」。これだけだ。そのために「皮の端同士を糸で結ぶ」などのテクニックがあるようだが、自分は「洗濯バサミ」を採用。スタジオ・パーカショニストたちのヨタ話の中に出てきたのを小耳に挟んだものだ。果たしてこういう使い方で良かったのかどうかは不明だが、用は足りているのでヨシとする。
後は写真の手順を参考に、良い音がなるように思いを込めつつ、一歩一歩前進していって欲しい。

貴方のコンガが良い出音になることを祈りつつ、筆を置く。(2003/10)
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【写真1】買ってきた状態の皮。結構厚みがあってしっかりしている。子牛(calf)の皮だとか。
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【写真2】張り替えを待つマイコンガ。LPのクラシックモデル。御家庭のインテリアにもバッチリの白木家具調仕上げ
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【写真3】リムを取り外した状態。上がこれから張る皮。右下がLPコンガ購入時に張ってある皮。素材はカンガルー。よく跳ねる。

【写真4】皮を柔らかくするために水に浸ける。一晩ほど。

【写真5】一夜が明け、すっかり正体がなくなった皮。でろりん。

【写真6】コンガの上に置いてみる。芯となるリングが必要だが、そうそう手頃な品が転がっているワケはないので、これまで張っていた方の皮を解体して流用。これにて古い皮は再利用不能に。今までおつとめご苦労様。もう戻れない一本道。

【写真7】余りに正体がなくアタリがつけにくいので、洗濯バサミにて仮固定。なんかヤル気がでてきたよ。

【写真8】上からリムをあてがい、ラグを目一杯ゆるめた状態で引っかけていく。

【写真9】ラグを引っかけ終わったら、洗濯バサミは御用済み。
| 【写真10】バランスを取りながら、徐々にラグのボルトを締めていく。写真はラグが内側から引っかけてあるが、単なる手違い。その後1ヶ月ぐらい気付かずに叩いていた。 |
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【写真11】ラグを締めていくと、余った皮が花開いてヒマワリ状態に。この状態で微妙に乾かす。

【写真12】生乾きで型がついたぐらいの案配で、余りの皮を植木ハサミで切断。リムを付けたままだと切りにくいので、一旦取り外している。乾燥させすぎると何をどうやっても切れなくなるので、見極めが肝心。

【写真13】再度装着して一応の決着を見る。後は風通しの良い冷暗所で乾燥させながら、1〜2週間かけてテンションを上げていく。思い通りの出音になるかは、それからでないとわからない。
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